タイムマシン経営とリープフロッグ現象
1990年代末期から2000年代初頭にかけて、ソフトバンクの創業者である孫正義氏によって提唱された経営手法に「タイムマシン経営」があります。
これは、日本では誰も実践していない海外のビジネスモデルやサービスを、まるで未来からタイムマシンで持ってきたかのようにいち早く実践し、そのモデルが日本で流行るまでの時差を活かして先行者が利益を得るというものですね。
当時そのモデルの輸入元は主に米国でした。

「米国で起きたこと・流行ったものは、日本でも必ず起きる・流行る」
と一種の法則的に言われたほどです。しかし、現在はインターネット環境やSNSの普及により、米国で起きたこと・流行ったことを、リアルタイムに誰もがキャッチできるようになったことで、少し状況も代わり、時差を活かせなくなった事で徐々にこの経営手法は下火になっていきました。
一方、隣の国中国でも同じ時期、米国のビジネスモデルを必死に追い掛けていました。ただし当時の中国においては、日本と比べて米国のビジネスモデルを実践する環境が圧倒的に未整備でした。そのため、先進国と同じプロセスではサービスの普及が進まず、途中の段階を素っ飛ばして一気に最先端の技術に到達してしまうという現象が起きています。
このような現象は「リープフロッグ現象」と呼ばれます。
ネットワーク・コーディネーター「アリババ」の成功
アリババが創業した1999年は、EC(electronic commerce)の始まりの時期に当たります。
要するに、ネット通販ですね。
EC(electronic commerce)とは、電子商取引と訳され、インターネット上でモノやサービスを売買すること全般を指します。「インターネット通販」や、「ネットショップ」といった、今日ではごく普通に使われている言葉を総称したものがECであると考えればよいでしょう。
現在では、手軽に自分で『ECサイト』ネット通販サイトを作成する事も可能なんですよ。
当時、米国ではアマゾンやeBay(イーベイ)が既にECサイトの利用者を拡大し、日本でも楽天やYahoo!がECビジネスをスタートしていました。アリババも米国をキャッチアップし、中国でECビジネスを立ち上げますが、当時の中国にはECビジネスの前提になるインフラ(決済、物流網、在庫管理の環境等)が圧倒的に未整備の状態でした。
米国のeBayも2003年から中国に進出しましたが、決済の成功率は本国や他の先進国と比べると著しく低かったそうです。
そんな中、アリババはこの課題を解決するために、自前の決済インフラ「AliPay」を創り、膨大な取引に耐えうるクラウド環境を設置し、在庫管理・物流をスムーズに行えるための環境を整備します。
その結果、時には楽天を超える売上を記録した事もありまs。これらを可能にしたのが、アリババの「ネットワークコーディネーション能力」と言えます。
また、アリババが自社のビジネスで培ったこの能力は、杭州市の都市設計にも大きく貢献しています。杭州市では、高度な情報処理技術により、都市のインフラがアルゴリズムで管理・制御され、インターネットと繋がることで、デジタル空間が人々の生活に影響を与えるという未来の都市生活が実現し始めているのです。
まさにこの事例は、後進的な環境を乗り越えるためのイノベーションが、世界最大のEC取引環境、世界最先端の都市設計まで可能にしてしまった「リープフロッグ現象」と言えるでしょう。
次世代金融への変革者「アント・フィナンシャル」
アントフィナンシャルは、先述したアリババのスマホ決済「AliPay」に始まる、アリババグループの金融会社です。「AliPay」が普及する前の中国の決済環境は、信用情報が整備されていないために、クレジットカードが普及しておらず、クレジットカードを保有する人にとっても端末が普及していないため使用シーンが限定される、にも関わらず市中には偽札が溢れ、現金管理にコストがかかるような状況でした。
この環境を大きく変えたのが「AliPay」によるスマホ決済です。この決済方法では決済にQRコードが使用されるため、店舗側もQRコードを印刷さえすればキャッシュレス決済の環境を設置でき、導入ハードルが非常に低かったのです。
結果として、現在の中国は世界で最もキャッシュレス進んだ国であり、これも不便な環境から最先端の環境が生まれる事例です。
さらに、「世界に平等なチャンスをもたらす」ことを使命に掲げるアントフィナンシャルは、これまで信用創造のコストが高く、見放されてきた地方の零細企業や農村にも、テクノロジーを駆使して金融を行き届かせています。
キャッシュフロー等の状況から、有効な信用情報を蓄積し、AIを通じて適正な融資条件を提示することで、これまで融資を受けることのできなかった事業者も、金融の恩恵を受けられるようになったのです。
現在、アリババのプラットフォームを通じて商売を行う事業者は、地方の奥地まで広がっていますが、これは決済や物流環境以外にも、アントフィナンシャルの金融に拠るところが大きいのです。
まとめ
中国で置きた「リープフロッグ現象」は、今後東南アジアや諸外国でどんどん進んでいくとも言われております。歴史が繰り返されるのと同じ様に、日本での5Gへの時代変化は、今後未だ未開発の国では新しい分野としてのビジネスチャンスですね。日本でも東京から地方へビジネスが広がっていく際、成功事案でも失敗事案でもアップデートされて各地へ広がって行きます。諸外国の動きでも同様です。日本で始まった事は、海外でアップデートする事で更なる成長やビジネスチャンスにも繋がって行きます。常にチャンスと捉えて行動をする姿勢が大切ですね。